ドジっ子についての対話


「今までの説明で"moe"については理解できたような気がします。しかし"dojikko maid(ドジっ子メイド)"については疑問が多いです」
「それは何故ですか?ミスター・デイビス
「与えられた仕事を全うできないようなメイドは解雇するべきだと思います。ましてそれに"moe"の感情を抱くなどということは理解できません」
「あなたは日本のオタク文化に"megane-moe(メガネ萌え)"があることをご存じですか?」
「メガネをかけた女性に魅力を感じる人は私の国にもいます。知性的で自立したイメージがある女性を好む感情は私にも理解できます。しかし日本のオタクによる"megane-moe"は事情がちがうように思えます」
「日本のオタクがメガネの少女を好むのは女性への恐怖心からきているのです。
 メガネをかけている→本や勉強ばかりの生活→対人関係や運動が苦手→そんな弱い人間なら僕でもなんとかなるかも …とまあ、こういうことなのです」
「いや…しかし、相手は絵でしょう?」
「絵であっても踏み込めないのが日本のオタクなのです。そう考えるとmaidの件も理解できるのではないでしょうか?"フィクションの世界で、更に主従関係"というところまで踏み込んでも、オタクは女性への恐怖を拭いきれないのです。だからこそ更に"無能である"という属性を付与してやらねばならないのです」
「なるほど」
「ギャルゲーと呼ばれる女性との恋愛をシミュレートしたゲームにおいて、しばしば極端に頭の悪い女性が登場するのもこういう理由です。一部のアダルトゲームにいたっては知能に障害がある少女を登場させるケースすらあります」
「日本のオタクにロリータコンプレックスの持ち主が多いのも頷けます。しかし、あまり気分の良い話ではありませんね」
「ですが、それは悪いものだとは言い切れません。彼らはそうすることによって、現実にその嗜好を持ちこまない努力をしているのです」
「そう聞けば彼らが立派であるように思えてきました。私が彼らのためにできることはあるでしょうか?」
「そうですね。日本でオタクを見たら『負けるな』と言ってあげてください」
「そうすることにします。そういえば、日本人女性ブロガーの間でメガネの男性に"moe"るのが流行しているらしいですが」
「それは男性のケースよりも何倍も悲しく、愚かしく、やっかいな問題です。ミスターデイビス
そう言って私はゆっくりデイビス氏のメガネを外し、床に思いっきり叩きつけた。
(続く)