親父の惑星

一時期の両親の不仲が解消されたようなのだが、思えば不仲の大元はなんだったのであろうなと気になっているところに妹から事の真相を聞いて驚愕。父親の浮気が原因だというのだ。
びっくりの原因は大きく分けて2つある。
まず、父親は老人と呼んでさしつかえない歳になっていることだ。70歳。俺と妹が産まれたのもいい歳になってからだが、いくらなんでも70で浮気もないだろう。
そして、厳格で頑固、俺の悪さには即鉄拳制裁を見舞っていた父親がまさか浮気とは…という幼い頃から植え付けられたイメージの崩壊も大きい。
だが、問題はそこではない。真の問題は浮気がバレた時の父親の対応だ。
「携帯の履歴を見せろ」と迫られた父親のとった行動は「うう」と唸って玄関の扉を開け走って外に逃げ出すというものだったらしい。悪いことをしたときは素直に謝れと顔が倍に腫れるまで俺をブン殴っていた父親の行動がこれ。再驚愕。完全に認めたとしかいいようのないリアクションだし、おまけになんの解決にもなっていない。問題を数時間レベルで先延ばしにしただけ。いや、数時間の先延ばしにもならなかった。父親は家のそばにある坂道を駆け上りだしたのだが、坂の先は壁。100%行き止まり。何故そこに逃げる。間抜けとしか言いようがない。しかし間抜けはここで終わらない。あっというまに母親に追いつめられた父は泣きそうな顔で携帯を目の前にかざすと、そのまま真っ二つにへし折ったというのだ。もう駄目だ。俺の中にある父親の威厳も2つに折れた。携帯破壊という名の大肯定じゃないスか。口で「浮気してました」って言った方がカロリー消費が少なくて済むよ。しかも父親の携帯は折りたたみ式じゃなかったらしいというから三度驚く。どんだけ元気なお爺さんなんだろう。


子供の頃は、大人になると苦労は増えるけど、その代わりに辛いことに対応できるだけの強い精神力を持つことができるんじゃないかなと想像してたんだが、今の自分自身を眺めてみても全然そんなことはないんだよな。最近発売された御緩漫玉日記の2巻を読みながら「人はいくつになっても似たようなことで苦しむよな」と思ってたけど、まさか身近にこんな面白い話があったとは。家出同然に実家を飛び出した俺もようやく父親を好きなれそうだ。まあ、尊敬はできないが。