少年漫画世界の心と体

キン肉マンで友情といえば他人のために死ぬことであり、北斗の拳で愛といえば他人のために死ぬこと。現実世界の感覚で考えるとどうにも重すぎる愛情表現よの。まあ、これは記号みたいなもんだから。
しかし現在の少年漫画では友情が描かれれば他方で孤独が描かれるように、もっと緻密な心理描写が望まれているようだ。であるにもかかわらず、物語は数十年前と変わらず、次々出てくる敵を倒し続けるだけという人間性と一番縁遠い展開。おかげで心と体のバランスが微妙に崩れてる気がするんじゃが。
たまに目にする「ワンピースはいくら傷ついてもキャラが死なないので緊張感ゼロ」という指摘とそれに対する「じゃあ男塾やキン肉マンはどうなんだよ?」という反論なんだけど、そこら辺の秘密も上記の心問題が関係してる気がする。色々なことに思い悩み傷つくのに、死に関する方面には全く思考が及ばないっつう。昔の少年漫画なら血がいっぱい出てれば大ピンチの表現として充分だったんだけど、今だと下手に心理描写が多くなった分、それじゃ足りないのかもな。じゃあヒーローが常に死の恐怖に怯えてる少年漫画が正解なのかっつうと、もちろんそんなことはない。ジャンプ方式のバトルマンガを貫くことと心理描写を重視して物語を展開させることの齟齬がかなりギリギリのとこまで来てるってことじゃないのかな。
HUNTER×HUNTERが面白がられてるのって少年漫画でありながら死の恐怖をしっかり描いて、しかも主人公チームは精神的におかしい人達だから死の恐怖に直面しても前に進んでいくという設定で物語を停滞させないことだと思う。これはすごいんだけど、こんな少年漫画か何個もあっても困るしなー。