シリアス内コミカル

週間少年ジャンプ連載中のアイシールド21に登場する峨王力哉は鉄柵を軽々と曲げ片手でテーブルを粉々にするほどの怪力の持ち主。彼の力は恐怖感を煽るような手法でモンスター的に描かれている。しかし、ギャグパートにおいて泥門の栗田だって軽トラックを破壊したり数人の大人を軽々と宙に放り投げたりと常軌を逸した怪力を見せてるんだよな。栗田が試合中にこの力を出せば問題なく峨王を止められる気もするのだが、この力はおそらく試合中には発揮されない。それはこれがあくまでギャグパート限定で発揮される力だからである。じゃあギャグパート内で起こった出来事はアイシールド21世界でどういう風な扱いになってるんだろうな。あくまでコミカルな演出のためとはいえ確かにトラックは壊れたのだ。この事実を放っておけまい。
まあいいや、やっぱ放っておこう。それにしてもシリアスなストーリー内の箸休め的に挿入されるコミカルパートってどうなってるんだろう。あそこだけ普段と異なる物理法則が支配する世界だよなー。シティーハンターのような銃で撃たれれば死ぬしナイフで刺されれば死ぬ世界であればハンマーでぶん殴ればやっぱり死ぬと思うんだけど、冴羽僚は死なないわけだ。ギャグの法則に支配されている世界ならともかく、外的要因で人命が損なわれる可能性のある世界でツッコミがわりに行われる暴力行為というのは冷静に考えるとヤバい気がするんだけど、実際は別にヤバくない。「この電撃で諸星あたる死んじゃうかもなあ」とかいう心配はしなくて良いのだ。行き過ぎた茶目っ気で恋人を殺してしまったラムちゃんの物語も見たいといえば見たいんだけど、そういうことにはならない。現実的な視点で見ると「全身が焦げるほどの電気を流す行為って酷すぎる。あれだったら包丁とかの方がマシだよ。包丁で刺されてもギリ生きてる可能性あるけど、全身が黒焦げになるほどの電気って絶対死ぬもん」とか思えてくるんだが、かといってラムの「電撃だっちゃー」が「包丁だっちゃー」とかだと冗談で済まない雰囲気が漂ってしまうよな。血が出る出ないは重要なのかもしれない。刺傷は笑いにくいというか。だが逆に、やってはいけないはずの血の出るツッコミをやることで笑いに繋げているのがボーボボとかパタリロとかお父さんは心配性とかだろうか。あそこは「刺しちゃマズイ」ってのがあるから成り立ってる気がする。
えーと、シリアス内のギャグパートの話だっけ。そういえば、あれはよく考えると秀逸だな。ドラゴンボールでジャッキーチュンが月を破壊することによって大猿化した悟空の変身を解いてしまうやつ。シリアスなバトルの解答が、本来ならギャグで使われるはずの月を壊してしまうという無茶だったという。ギャグパートをギャグパートで独立させないで物語に組み込むなんて、こんなハイレベルな融合はそうそうないんじゃないかねえ。よくネタにされるところの「フリーザが惑星を壊すとか言ってたけど、それぐらい亀仙人でもできた」って話だけど、どこかで世界の法則が変わっちゃったんだろうなあ。当時と比較して大気中のユーモア濃度が半分ぐらいの世界に。