片付けなくちゃくるっちゃう

狂いの構造(春日武彦 平山夢明著)という本に「異常犯罪者の部屋は大抵汚いよ」みたいな話が載ってたんで、「あー」とか思いながら部屋を片付け始めた。いや、異常犯罪に心当たりはないのだけれども、1つの事に鈍感になることが別の何かへの鈍化を招き、気がつくとあらゆる種類の鈍感が精神を支配してたりなんてこともあるかもしれないと思ってな。白いハンカチに一滴の黒インクが落ちれば気になるが、ハンカチが真っ黒に染まったあとならさほど気にもなるまい。見た目にゃ黒いハンカチなんだから。しかし、そいつで顔を拭こうとすると頬に黒いインクがベットリ。恐ろしい事だ。
そんな事を考えながら片付けを続けてるんだけど、意外とめんどくせえなあ。別に本やゲームやCDが散らばってたって腐るわけじゃねえし、いまひとつやる気が起きねえ。あれだよな、たった今「鈍感がマズイ」みたいなことを書いたけど、人間は鈍感であるゆえに生きていられるみたいなとこあるしな。日常生活の中に針のように潜む苦痛を、全て真っ向から受け止めていこうとしたら、きっと心が折れてしまうに違いない。敏感すぎる人間は自ら命を絶ってしまったりすることもあるしさ。俺も部屋の汚さに寛容になってみてもいいんじゃないかと思えてきた。部屋中にガラス片が巻き散らかされているとかならともかく、本なんだから上を歩く事も普通にできるわけじゃん。片付ける意味とかあんまりないよな。
俺の経験上、もっと鈍感になっても良い人間に限って生き辛いまでに鋭敏さを増していき、もっと敏感になるべき人間の精神は果てしなく鈍磨されていく。俺は自分の敏感さを自覚しているので、片付けを途中で止めてゴロゴロすることにした。