格闘ゲーム大好きっ娘

もー。ギャルゲや萌え漫画に格闘ゲームが得意な女性キャラ出すの禁止ー!……と思ったけど、禁止するまでもなく格闘ゲームの下火と共にそんな属性を持ったキャラクターはいなくなってしまたのだった。なんでゲームが得意な女子を作中に登場させるかというと、もちろんオタへの歩み寄りであり、それが家庭用RPGとかではなくアーケードの格闘ゲームなのは、○連勝って形で凄さを表現しやすいからであろう。大幅にストーリーを割くような部分でもなかろうし、短文で強さを表現できるのは都合が良い。この手のキャラ付けが行われるのが、オタにとって、ちょっと取っ付きづらそうな性格のキャラであるケースが多かったのも気になるな。「この子は一見あなたとは接点がないように見えますけど、実はあなたと同じような部分だって持ってますよー」ということか。などと思ったら、らきすた格闘ゲームっ娘(CV:平野綾)がいるという話を聞き、今頃それはねえだろうと思うと同時にらきすたってオタちびまる子ちゃんみたいなノスタルジアの世界なのかー?と思ってみたりした(見たことないので知らない)。
しかしなー。こういう露骨な歩み寄りって当時ならともかく今でも喜ばれるものなんだろうか。いやー、オタはオタにやさしいフワフワした世界が大好きなビューティフルドリーマー(ビジュアルイメージ的には蔵馬に邪念樹の種を植え付けられた戸愚呂兄)じゃけん、それなりに楽しめたりするのかもしれん。しかし一部の繊細なオタはケントデリカットの物真似で「オタ馬鹿にしないでヨー」と抗議の意思を示すであろう。だったらいっそ登場ヒロイン全員が格闘ゲーム大得意のギャルゲとか作ればいいんじゃないかな。真面目な図書委員長だけど格闘ゲームが得意、快活な幼馴染で格闘ゲームが得意、大財閥のお嬢様だけど格闘ゲームが得意。ここまでやれば「別にこの設定に媚びるような意図はありません」ということがわかってもらえるだろう。そしてこの設定、別にそれがストーリーに関わってくるわけでは全くなく、攻略対象のヒロインを全員クリアしたあと「あいつら全員格闘ゲームが得意だったけど、なんか意味あったのかな……」とプレイヤー不安な気持ちにさせる。筒井康隆の『虚人たち』みたいなものですよね。関連性のない事件が同時多発するという。いくつもの幸福な恋愛の物語にひっかかかる魚の小骨ですよ。とくに実害があるような設定じゃないからオタが不快になることもないし、これは良いんじゃないですかね。といったものの、何が良いのかさっぱりわからないな。別に得することないし。
でも、あるじゃないですかギャルゲの類のシナリオライターが無駄な作家性を発揮しすぎたあまりにオタ激怒みたいな話。金払ってるんだから甘い世界を提供しやがれという言い分もわかるんですが、それだといつかは袋小路につっこんじゃうわけでね。だから、ここらへんの実害のない不安感あたりから始めてみてはどうだろう、と。別に格闘ゲームじゃなくて良いんですけどね。ヒロイン全員、煮豆の匂いを嗅ぐと吐いてしまうとか。ヒロイン全員偶然同じ名前とか。あっ、全ヒロインの声が偶然そっくりってどうだろ?これだと声優1人で済むじゃん。同じ声なんだもん、仕方ないよ。更に全ヒロイン同じ顔ってことにすればキャラデザも楽でいいじゃん。もちろん「実は姉妹でした」みたいな甘えた設定一切なしで。風景も同じ。BGMも同じ。結果として全てのシーンは1枚のグラフィックに集約されてしまう。総グラフィック数、1枚。これは革命ですよ。でも初志は貫きたいから、やっぱり格闘ゲームが得意な設定は残しておきたいな……。