後悔できるRPG

セブンスドラゴンをプレイして面白さを感じた瞬間は……これは世界樹もそうだったんだけど、悩みに悩んだ末に使えないスキルを選んでしまってガッカリしている時だったな。後戻りのきかないガッカリを味わえるゲームって最近少ないからなあ(といっても救済措置としてパラメーターの振り直しができる局面は用意されているんだけど)。自分の意思で選択した以上、誰に対しても文句の言いようがない自業自得のガッカリ。「このスキルは絶対に主軸として使っていける」と信じて、前提となるスキルを取得し続け、ようやく覚えた本命のスキルを実際に使ってみたら、どう考えても使い道がない。そのキャラ1人の問題ならまだいいのだが、その技を主軸に他のキャラの技を連携させるプランまで構築済みだったため、他のメンバーのスキルも微妙なことに。すごいガッカリ。いっそ最初からやりなおしたいぐらい。しかし一度がっかりした後は、このパーティーをどう立て直すかを考えるのが楽しくなる。そして立て直しに成功した時は素直にうれしいのだが、かつて取得した使えないスキルがいまだステータス欄に刻み込まれたまま消えぬ様を目にすると、軽く嫌な気持ちになる。それが良いのだ。ステータス画面を見るだけで、自分が何を思ってキャラを育ててきたかがわかるっつう。
そういえば『大合奏!バンドブラザーズDX』で俺が面白いと思ったのはゲーム本編ではなく、ジャスラックとの契約の問題で追加曲のダウンロードが100曲までで、一度ダウンロードした曲の削除は不可という仕様だった。まあ、これは明らかな欠点だといえばそれまでなのだが、好みの曲が追加されるのを待ち続けて100曲分の枠を腐らせる人もいれば、一気に何曲もダウンロードしたために後日後悔する羽目になる人もいたり、また同じ曲でより完成度の高いものが後日アップロードされることもあるので、ダウンロードの楽しみは常に後悔と隣り合わせというあたりに俺は強い魅力を感じたものだ。
そこで考えたのがセブンスドラゴン世界樹のシステムをガッカリ特化でつきつめていったら面白いんじゃないかということだ。基本的なゲーム内容はそれらと同様に前提スキルを取得していくことによって上位のスキルを取得できるようになるシステムで良いのだが、明らかになっているのがスキルの名前だけで内容は全く不明というのはどうだろう。例えば『ロデオステップ』というスキル名だけを頼りに「戦闘中にスピードアップする技かな?」と予想しつつ、苦労の末に取得すると、マップ画面を移動中している時の歩行音が馬のひづめの音になるだけという迷惑極まりないスキルだったり、『ウエポンブレイカー』という極めて効果の予想しやすい技を狙ってみたら、装備や受け渡しの際に武器に触れる度、低確率で扱いを誤って破損させてしまうという迷惑スキルだったり、『ドラゴンキラー』なら鉄板だろうと思いつつ取得すると、果たしてドラゴン系の敵に大ダメージを与える技だとわかり小躍りするものの、ゲーム全編を通してドラゴン系の敵が一匹も出てこないことがジワジワと判明してくる遅効性ガッカリスキルだったり……かと思えばどう見ても罠としか思えない『ブラッディソード』なる名の技が普通に敵に大打撃を与える優良スキルだったりとか。
単に使えるor使えないという問題でなく、もっと精神的なダメージがあってもいいかな。例えば『ダブルヘッダー』という、名前から効果が想像しにくいスキルを取得してみると、プレイヤーキャラの首が2本に。ただしこのスキル、2つの首を使うことによって1ターンに2種類の呪文を唱えられるという強力なスキルなのだが、今までがんばって育ててきた鎧ビキニの美少女キャラの首が2本になるのはかなり辛い気持ちになると思う。
リセットを許さないためにスキル収得時には自動的にセーブが行われるようにすれば面白いんじゃなかろうか。問題は成功し続けた場合も失敗し続けた場合もゲームとして成立するようなギリギリのバランス取りが必要になってくる点と、攻略情報が公開された時点で完全にゲームとしての価値を失ってしまう点か。というか現在のネットの普及率を考えると後者についてはかなり厳しいものがあるんだが。