テーブルトーク式恋愛相談

俺は知人女性から電話での恋愛相談を受ける事が多いのだが、当然ながらこれは俺が恋愛の達人として認知されているからでは全くなく、つまりは半ば一方的な心情吐露に近い長話を文句も言わずに聞いてくれる安全な人間として認識されているということであろう。
しかし、まさか相手の女性も電話の向こうの俺が6面体ダイスを2個振った結果でリアクション内容を決めているとは思うまい。相手の問いかけに対し、出目の合計が奇数なら肯定的な反応。偶数なら否定的な反応を示す。なおゾロ目が出た場合は振りなおしなのだが、次に出る目に『強い語気で』という属性を付加するものとする。つまり出目の順番が『ゾロ目→奇数』であれば『強い肯定、強い同意』という反応をとるわけだ。ロールプレイとしてはかなりの面白さである。さすがにこれだけ聞くと俺が冷酷な人間であるかのような誤解を受けそうだが、相手を否定をすれば、それに対して納得するにしろ反論するにしろ、何らかの手持ちの情報をしゃべるのが人間というもの。相談を受ける上で重要なのは相手の情報を多く得て、それを足がかりにアドバイスを組み立てることだと思うので、これは相手を思いやった行動だと自負している。まあ、情報が増えた所で次の質問に対する反応もサイコロで決めるわけだから、別に情報が増えたところで関係ないんだが。
そして会話のラストだが、これが重要だ。よく言われるところの「相談を持ちかけてくる相手は、だいたい自分の中での答えは決まっている。要するに誰かに後押しをして欲しいだけだ」というやつだが、これを利用する。ゲームマスターである俺としては「このゲームマスターの提供したシナリオは感動的だった」また「シナリオをクリアする上での選択はプレイヤー自身が行ったので、お仕着せのシナリオを一方的に聞かされるのとは違う、精神的な高揚感があった」という具合に満足度の高いラストを提供したいわけだ。ここで有効なのは「結局、君はどうしたいんだい?」という台詞だ。これをシナリオが最高潮に盛り上がった時にぶつけると良い。あとは相手が一方的にエピローグに繋がる長台詞を披露し始めるはずだ。シナリオは電話がかかってきた時点で完成されているとすら言えるのだが、たったこれだけで、プレイヤーたる女子は自分の選択の積み重ねがシナリオのラストを導いたかのような錯覚を覚えるのだ。
如何だっただろうか?以上がベーシックルールである。俺ぐらいの上級者になると、この程度のセッションでは満足できないので、使用するダイスを20面体ダイスにしている。しかも1から20までの目に詳細な結果を設定し(1が出たら、慈しむような声で浜崎あゆみを歌って相手を慰める、など)、更なる高度なプレイに挑戦している。このエキスパンションルールを活用しだしてからは、めっきり女性からの相談が減り、それどころか知人の間で俺に対する陰口が囁かれていると言う噂も聞く。まだまだルールに改善の余地があるということだろう。万人が楽しめるルール作りというのは困難を極めるものだ。