酢と油

ファミリーマートの店内放送でしきりに唐揚げ寿司というものを薦めている。レジで店員にお申し付けくださいと言われてもちょっとそれは買う気になれないよと思いつつ買い物を続けていたのだが、何度も薦められるうちに「とりたてて良くはなかろうが、それなりに食える程度のものじゃないだろうか?」と思えてきた。店内にいる時間に比例して購買意欲ゲージは次第に上昇し、レジに並ぶ頃には完全に唐揚げ寿司を購入する気持ちでいっぱいだったのだが、俺はレジに書かれた唐揚げ串という文字を見てがくりとうなだれ、行き場のなくなったマックスゲージをもてあましながら帰路に着いたのだった。

劇場型RPG

「お前達の目的が姫に呪いをかけた邪悪な魔術師の討伐であることはギルドでも説明を受けていると思うが、わし直々に補足せねばならぬ点があってな。まず姫の呪いについてだが、たいしたものではない。それは呪いをかけた魔術師の魔力自体がたいしたものではないからだ。城の兵士を数人も差し向ければ、あっという間にけりがつくだろう。しかし、それではいかんのだ。あくまでも姫はフラッとあらわれた旅の冒険者によって救われなければならない。恥ずかしい話だが、姫が床に伏せっている理由は呪いよりも心労によるところが大きいのだ。自分に寄せられる国民の期待は重圧となり姫の心を凍てつかせてしまった。姫は孤独感によって引き裂かれ、床より起きることがなくなってしまったのだ。
そこでだ。お前達が命がけで姫を救うことによって、姫に「自分は愛され必要とされている人間だ。自分のためにこんなにも力を尽くしてくれる人がいる」と思わせてやってほしい。命がけでと言ったが実際はそんな苦難などありはしない。前に言ったとおり魔術師は弱い。魔術師の根城に救う怪物どももお前達の実力からすればまるで敵ではないだろう。更に先に向かわせた偵察隊が迷宮の構造や罠の配置については調べつくしているので、危険はまるでないといっても過言ではない。しかし、お前達の後から遠見の水晶球を持った従者が同行するの忘れないでくれ。この水晶球を通して冒険の様子は全て姫の寝室に届く。お前達は冒険の過程でなるだけ傷つき、なるだけ苦戦し、時には姫への思いを叫び、要所要所で涙を流し、人を信じることの尊さを行動で伝えねばならない。
難しい任務になるだろう。それほど魔術師は弱く、君達の前に苦難はない。しかしお前達なら必ず成し遂げると信じているぞ。頼む、姫を救ってやってくれ」
というRPGを体感コントローラーと専用マイク付きで作ったら面白いかと思った。「このタイミングで膝をついて崩れ落ちるとボーナスポイント獲得!」とか「ここら辺で剣を取り落として大苦戦しておこう」みたいな。単純にTRPGでやってもよさそうだけど。

中ニワープス

ワープスというTRPGにはヒーローポイントという特殊なシステムがある。このポイントを消費することによって「実は知っていた」「実は持っていた」というように後付けで設定を変えてしまえるというユニークなシステムなのだが、これを中二病設定限定でやったら盛り上がるんじゃなかろうか。「実は神と魔族の間に生まれた子供!」とか「実は俺の右目には時間を止める能力が!」みたいな感じで。収拾つかなくなりそうだが。