イナズマイレブン見てる
そもそもはエンディングでBerryz工房のニューシングルが先行試聴できるらしいってことでイナズマイレブン2を遊んでたんだけど、ストーリー中に出てくる「洗脳なんてしなくたって楽しいサッカーはできるって証明してやろうぜ!」という歪な台詞や『野生中学のゴリラ選手』などといったあんまりな登場人物に心を動かされ、これは是非ともアニメの方も見たいと思ってレンタルショップに走ったんだけど、やっぱり子供達に大人気なようで常に貸し出し中なんだよな。で、ようやく返却されていたので手に取ったら、そばにいた子供が曇った顔で俺の方を見ていた。どうやら彼もイナズマイレブンが目当てらしい。スッと手を引っ込めると子供の顔はパッと輝く、再び手を伸ばすとまた曇る。こんなピュアな子から楽しみを奪うわけにはいかないので「タイトルが似てるんでブラックラグーンと間違えたわ……」と呟きながらDVDを棚に戻して撤退。更なる返却待ちで視聴は大幅に遅れた。
そういう経緯を経て、ようやく見始めたんだけど面白いわーコレ。今16話まで見たんだけど、9話あたりからは毎回号泣しながら見てる。歳をとると涙もろくなるのかなあ。これが今の子供達に人気なら日本は安心だわーって優しい気持ちで観賞してる。
今時珍しいぐらいにベタな熱血&友情はもちろん、次々と登場する怪必殺技も魅力の一つなんだけど、対帝国学園戦で登場した皇帝ペンギン2号というシュートはかなり振り切れてた。口笛とともにグラウンドから5体のペンギンが這い出してきて、ボールと共にゴールを襲うという技なんだけど、問題はその見た目の奇異さじゃなくて、なんでこんな技ができたのかに関する理由付けがない事なんだよな。百歩譲って使い手が北国出身だとかいうならアニメ的には充分な説明になるんだけど、そういうのすらなく「ゴッドハンド(主人公の必殺技)を破るために編み出した必殺技!」とか言って極めてシリアスに登場する。このペンギンが観客に見えてるものかどうかも気になるんだよね。染岡がドラゴンクラッシュを編み出した時は、チームメイトが「ドラゴンが見えた」みたいなことを言ってたけど、これは使い手の気迫が龍を幻視させたという類のものかもしれないし、そうでなくても気やオーラがドラゴンの形態をとるというのはアニメならば普通にあり得る事だ。しかし、どのような方向で修練を積み、どのような方向の気迫を見せればペンギンが5体見えるのかというのは謎だ。解説の人も「見た事もないシュートだ」としか言ってないので、ひょっとしたらあれは視聴者に向けた演出に過ぎず、実際に人の目に映る類のものではないという解釈もできそうかと思ったのだが、真相はわからん。
そう、だいたいの技においてそれが事実として起こってる事なのか演出としての表現なのかがわからんのが不思議な感じで楽しいんだよな。スポーツ漫画やアニメにおいて、高威力であるという表現の延長線上としてボールが炎を纏うなどというのは普通だし、高速移動の延長表現として分身や瞬間移動が出てくるのもよくあることだ。でもディフェンスの背後からせり出してきた壁にボールが阻まれるだとか、地を這うように蹴りだされたボールが土を巻き込んで巨大な土玉になりつつゴールへ向かうとかが、この世界に生きる人の目にどう見えているのかがわからんのだ。基本的なストーリーがシリアスだけに、この荒唐無稽さが引き起こす面白さが引き立つ。近年のアニメだと、たとえ子供向けであろうと、もう少しだけ合理的な説明をするだけの誠意を持った作品が多いと思うんだが、あえてそこをブッちぎってるのがイナズマイレブンなりの誠意だと受け取った。続きが楽しみすぎるので、次にレンタルショップで件の子供と遭遇した時は、悲しげな目を無視してレジに向かってしまうかもしれん。先に謝っておく。すまない、子供。