ジャンケンの歴史

その歴史は古代ギリシャに溯る。
驚くべき事に、かつてジャンケンにはグーとパー以外の手が存在しなかったというのだ。
それでは皆がパーを出すのではないかと思うかもしれないが、そうはならない。なぜなら身分によって出せる手が決まっていたからだ。つまり、王族にのみパーを出すことが許されるという形で。
ただ力関係を確認するためだけの儀式であるジャンケンを"遊戯"だと言って憚らない王族の悪意に反駁したのが、かの有名なソクラテスであった。
「遊戯が行われる空間には、有形無形問わず、遊戯に関連しないものを持ちこむことはできない」
今日において当たり前のように出されている"チョキ"も当時は革命的な発明であったようだ。
なにせ三すくみという概念自体が存在しなかったのだ。チョキを加えるだけで"ただの儀式"が"平等な遊戯"に変わったことに万人が衝撃を受けたという。
しかしこの考えを受け入れない一部のアテネの民によって、ソクラテスは告発された。
青少年を堕落させた罪と不敬罪の2つの罪状で、だ。
ソクラテスは"チョキ"を考案した罪にふさわしい罰として、大ばさみで首を刎ねられるという形で処刑された。


ソクラテスがこの世を去り、グー・チョキ・パーからなるジャンケンが消滅したかどうかは皆さんもご存じのとおり。
そう!ジャンケンは今日も生きている!
紀元前の異国に、これほどにまでゲームに対して誠実な男がいたことを思うと、私は胸が熱くなる。
皆さんもジャンケンをする時には、少しだけで良いからソクラテスという男の偉大さに思いを馳せて欲しい。
私もソクラテスのようにゲームを愛し続けたいと願う。