ロマンチックな狂気など存在するか

夜道を歩いていたら、パンツを被った中年男性が荒城の月を歌いながら闊歩しているところに出くわした。
パンツは男性用のものであり、それはつまり、少なくとも事件性はないということなので、これは平和な光景のバリエーションだといえるだろう。
理性の枷を取り払った精神的ストリーキングをしばらく目で追ったあと、視線を空へ移した。ルナティックが月の歌を歌っているのに月は暗雲の向こうである。