蔵人博士の魔界塔

真木蔵人が同級生の顔をノコでひいたという話を聞いた時には戦慄したものだ。フィクションの世界ですら忍者だの殺し屋だのという甚だしい職業の人達が感情を捨て去る訓練を受けてはじめて獲得できる境地に、一介の中学生がやすやすと到達してしまったというのだから。
しかしノコギリで顔をひくという凶行の原因を探れば、それがチェーンソーで神を真っ二つでお馴染みの魔界塔士Sa・Gaであることは疑いようがないだろう。事件があった時はSa・Gaはまだ発売されてないのだが、時間の流れすらものともせず子供達に悪影響を与えるあたりがゲームという洗脳メディアの怖ろしいところである。まあ、たしかに魔界塔士でもない蔵人がノコをひいたのは凄いことだが、よく考えたら相手も神ではなく同級生なので、そこら辺でチャラと言えないこともない。チャラ?
蔵人のことで思い出深いのは恋人への暴力沙汰でワイドショーのインタビュー*1を受けていた時のことだ。日本語に英語を織り交ぜた…といえばルー大柴あたりを思い出すだろうが、その伝わらなさが段違いだった。ルー大柴の場合は実は伝わるようにしゃべっているところがポイントだ。もっと簡単に伝わるのにわざと回り道をしてみせることによって疑似ディスコミュニケーションを引き起こし、そこに笑いが生まれるというテクニック。これは充分にコミュニケーションが成立しているといえる。不条理系のコメディアンすらそうだ。伝わらないことによって笑わせたい者と笑う者という関係が成立しているわけだから、これもまたコミュニケーションである。
しかしデタラメなタイミングで名詞動詞問わず挿入される蔵人英語は、理解される事を拒絶してるようにしか思えなかった。いや、インタビューなのだからそんなわけはない。伝えようとしているのに何も伝わっていないのだ。その光景に俺は震えた。同じ人間なのに蔵人とは会話が成立しない。つまりこれは、俺の言葉は蔵人に通じないのに蔵人のノコギリは確実に俺の顔面をグチャグチャにするということだ。空前の理不尽に血が凍った。


しかしだ。

  • 蔵人独白(くろうどのひとりごと)-メロウマイマインド

http://d.hatena.ne.jp/mellowmymind/20060501/p1
知人から「テレビで蔵人見たけど、気のいいオヤジって感じになってたよ」とは聞いていたのだが、ここにいる蔵人は充分に話せそうな雰囲気がある。あのニュースが15年ぐらい前だったような気がするが、だいたい15年ぐらいあれば人と人はわかりあえるのかもしれないと無根拠に思った。今の蔵人になら顔をノコギリでひかれてもいいかなと思ったが、さすがにそれはないかなと思いなおした。まあ、ノコはちょっとな。
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*1:あまり関係ないのだが、この記者会見で蔵人が言っていた「彼女は俺からleaveしていったわけだし」というフレーズがいまだに頭に焼き付いて離れない。女性と別れ話をしている時には必ずこのセリフが真木蔵人の声で頭に浮んで泣きながらも笑いそうになる。