想像力と火星人

俳優・イッセー尾形の一人芝居への賛辞としてよく見かけたのが「鋭い人間観察眼」であったのだが、俺としてはどうもこれに違和感があった。もちろんそれもあるだろうが、真に凄いのは想像力の方だよなあと。あんな人間いるわきゃないのに観客を普通に納得させちゃうというキャラクターの作りこみかたは想像力のなせる技よな。いや、待てよ。これって俺の意見だっけ?どこかの本で読んだ意見である気がしてきた。やばいな、自分の意見か他人の意見かわかんなくなってるよ。まあ、そう思ったのは事実であるわけよ。なんか社会の片隅の風景を彼が切り取ったってことにした方がありがたみが増すからなのかもしれんけど、創作の世界ですら経験の方が想像力より重視されたことに疑問を持ったのな。俺が持ったんだっけ?どっかで見たんだっけ?他人の発言を自分のものとして語ってはいかんよな。じゃあ、本で読んだってことにしとくか?いや、でもそれは自分の発言の責任を回避する態度に繋がりかねない。じゃ、やっぱり俺の意見ということで…。うん?待てよ?うむう。


話が進まんではないか。……まあ、世界のどこかでそんなことを思った人がいたのよ。で、そんなことから、意外と想像力って軽視されがちなのかなということを思った。「想像力の翼」などといわれてありがたがられる一方で、それより重要(っぽい)ものが横に並ぶと忘れられてしまいがちという。
これで思ったのが悩み相談・人生相談の類。この手のものの相談役には経験を積んでいる人こそ適任だとされているけど(雑誌等の記事だとアイキャッチ性もあるから当然ではある)、想像力ってけっこう大事だと思うのな。相手の現状と能力って本人の口からすら正確に語られないものだから、やはりそこを埋めるのは想像力だと思うんよ。ほら、「相手の身になって」という言葉もあるじゃろう。まあ、結局は相手じゃないから正確に読み取ることなんてできないんだけど、でも一方的な押し付けよりは意味があるだろう。もちろん、相談者側のカリスマ性を利用して自分の意見を叩きつけるというショック療法も存在するが(車田正美北方謙三タイプ)、これは自分の魅力と相談してからやるべきだな。相手と一緒に出口を探そうという意思があるなら、やはり想像力は欠かせまい。
たしかに人は自分の知識の範囲でしか語ることができん。例えば火星人の絵を描いてみてほしい。どっかで見た宇宙人の絵をツギハギしたようなものができるんじゃなかろうか。これはしょうがないんよ。しかしだ、もしここで「火星の大気は薄い」とか「火星の重力は地球の40%と」とかいう情報を加味した上で描いてみたらどうか。これを考慮にいれたところで、所詮は地球の常識をベースにしたものにしかならないかもしれない。でもな?さっきお前が書いたタコの絵よりは正解に近いはずなんだよ!これだよ。知識を元に想像する。これが悩み相談に大切なことじゃないのか。これなら例え不正解でも火星人だって納得してくれるぜ。火星人が侵略に来た際も、お前の命だけは助けてくれるに違いない。研究材料とかだけど。
要は想像しきれなかったとしても、想像しようとした態度は良い結果に繋がりやすいのではないかという話。なんかイッセー関係なくなっちゃったけど。火星あたりに消えちゃったかな。 あとは忍耐力とかですかね。これは重要そう。本人に適したアドバイスを見つけるにはどうしてもトライ&エラーが必要になるだろうから。うわあ、大変だな悩み相談。俺には無理だ。にもかかわらず世の中には頼まれてもいないのにカウンセラーを務めたがる人がたくさんいるのか。特にネット。あ、ちょっと待ってて。その理由、今から想像するんで。