猫と魔王

かくて猫の飼育に喜びを見いだそうとする魔王だったが、猫の寿命は人に比べてあまりに短く、魔王の寿命は人に比べてあまりに長い。魔王は幾たびも幾たびも愛するものの死を目の当たりにせねばならなかった。
悲しいという感情は魔王の生活の平坦さをいくらばかりか軽減させたともいえるが、胸の痛みのみをアクセントにした日々など楽しいわけがない。
ついに魔王は自らの培ってきた魔道の粋を結集し、1000年生きる猫を生み出そうとする。
第一の障害になったのは猫又化であった。100年生きた猫は猫又になってしまう。猫又になってしまっては1000年生きる猫とはいえない(つづく)