ドリンクと呼ぶ声が聞こえ
世界初オタク系SNS・オタバなのだが、とりあえず登録したものの全然利用することはなかった。当時は退会するのにわざわざメールを送らなければならない仕様だったため、面倒くさくて適当な名前に変更後放置することにしたのが何ヶ月前のことだったか。
そしてotabaの存在が記憶から消えて暫くたったある日、メールチェックをしているとotabaからのインフォメーションメールが届いていた。普段なら気にとめないところをなんとなく開いてみると「ドリンク飲夫さん、こんにちは!」という挨拶が。
もちろんこれは放置前に自分が変更した名前なのだが、そんなことがとっくに忘却の彼方である俺は、突然飛び出した滑稽な名前に困惑し、でありながら「この名前、どこかで見たことがある」というデジャブにも似た感覚に混乱し、更に更にその奇怪な呼び名がどうやら自分を指しているであろうことに言い知れぬ不安を抱きながら、目を丸くしたまま3秒ほどモニターを凝視したのだった。
ようやく記憶の糸が繋がり自分がドリンク飲夫だあったことに気づいた俺は、思いもよらぬ過去からの攻撃者に戦慄し慌てふためいた自分が恥ずかしくなり、口の端を歪めながら「俺め…」と呟いた。敵はどこにいるかわからない。時として自分の中にいることすらあるのだ。