恋のマジックポーション

恋愛の高揚感は魔法に例えられたりするが、それが永続効果を持つものではないことはご存知のとおり。シンデレラのお話の中を例に出せばわかりやすいでしょうか。ひとたび魔法の効果が消えてしまえばドレスはボロ布に、馬車はカボチャに、立派な馬は小鼠に、モニターの上に並べた12体のシスプリのフィギュアは全部首の取れたコオロギの死体に。
んなわけで我々は魔法の持続時間を長くするための儀式を行ったり、魔法の品に頼ったり、魔力を増大させるといわれている聖地に赴いたりするわけですが、それでも終わるものは終わるわけです。
先日、街で昔の恋人に出くわしたので手を挙げて挨拶しようとしたら無表情で眼前を通過されましてね。あるあるネタの定番で「知り合いだと思って手を挙げたら知らない人だったので、その後の手のやり場に困る」みたいなのがありますが、これって知ってる人だと更に困りますね。天に掲げた腕にバーンと雷でも落ちてくれば格好がつくのでしょうか。まあ、俺の心の中には落雷に似たショックが駆け巡っていたんですが。
なんだろ、これは透明化の魔法を習得したってことでいいのかなあ。えらいものを習得してしまった。ちょっと前までは2人の間にあったのは、もっとホンワカした魔法だった気がするのに。ステッキを振ったら花が咲く系のやつ。それが今はどうだ。なんつうか向こう側から俺を透明にせんとする強い意志が感じられるのな。口を開いてないのに「消えろ」って声が聞こえた。やべえ、テレパスも習得してしまったようだ。
まあ、もちろん上記はフィクションであり、実際は無いんですけど、あの、挙げるべき腕とかが。だから恋の魔力とかについての話はわりとどうでもいいんです。いいんですけど、存在したものがゼロになるとかならともかく、そのまま逆転して負のパワーになったりするのは凄いよなあ。呪い返しみたいなもんだろうか。