世界樹と階層世界

バカは高いところが好きというがオタは深いところが好きなものだ。縦軸の移動は人間をときめかせる何かがあるのだろうな。高いところはわかりやすい。動物の本能のようなものだろう。「拳法の闘いにおいて背後頭上を取られることはすなわち即、敗北を意味する」と猴拳、またの名を猿拳、その流れを汲む野猿牙殺拳の人も言っておった。深いところはなんだろうな、穴に潜ることで優位に立つ拳法とかがあれば説明がつくんだが。まあ、要は縦移動自体が日常的に行われるもんじゃないからだろうな。スペシャル感があるんだよ、縦には。
縦移動物語の中でも階層世界モノは良い。SaGa、サンサーラナーガ2、魔神英雄伝ワタル。階層の移動は世界を捨て去ることだ。いわば汽車にのって故郷を発つ寺山修司。それが幾度も繰り返されるのだからいわば連続寺山修司だ。そこには新たな世界へと飛び立つ高揚感と見慣れた地に別れを告げる寂しさがある。
世界樹の迷宮のプレイ中、行ける範囲のマップは埋め尽くし、取れるアイテムも全て取ってしまい、あとはボスに備えて経験値を上げ続けるだけの状況が結構長めに続いた時があった。ふと気付いたが、この状態だと世界樹の迷宮ならではの面白さって少ないんだよな。もちろんボスを倒せば新しい展開が待っている。しかし、いつかは階層世界の果てに至るまでの地図は描き尽くされ、このゲームならではの面白さは失われてしまう。ここら辺の妙な寂しさも物語とシンクロしている部分があるような気がする。
最深部まで辿り着いたらもう旅立つ先はない。そうなった時に目指すべきはどこなのかという話か。