オタ夢十夜 3

こんな夢を見た。そのゲームのパッケージに書かれた『ごくごくコントローラー同梱で4980円』の文字を見た俺は「ごくコン同梱でこの値段は安いな」と呟きながら即、ソフトを手にレジへと向かった。帰宅した俺は、外見上は完全に緑色のゴームホースにしか見えないごくごくコントローラーの片方をを水道の蛇口に繋ぎ、もう一方を口にくわえ、そのままモニタの前に座ってゲーム機の電源を入れた。画面上には一人の男が表示されている。俺がそっと水道のバルブをに捻り、流れ出す水をごくごくと飲み始めると、画面に表示されたキャラクターは徐々に加速を始め、画面の右へ向かって駆け出した。こうやって俺が水を飲むことによってキャラクターをゴールまで導くのがゲームの目的らしい。特に複雑な操作を要求されるものではないので容易にクリアすることが可能であろうと考えた俺だったが、ほどなく気道に対する水攻めを食らって激しくむせかえることになった。間断なく水を飲み続けることは思いのほか辛く、俺は何度も緑色のホースを口から吐き出して床にうずくまった。ようやくステージ1をクリアした俺を待ち受けていたのは恐ろしい試練であった。画面に表示される『ステージ2 お湯ごくごく』の文字。俺は無表情でモニタを見つめ、何度か頭を左右に降ったあとに、意を決してホースをくわえたままに赤い印のついたバルブを捻った。「熱い!熱い!」俺が口から吐き出したホースは湯を撒き散らしながら大蛇のように床を跳ねた。あまりにも苦しいのでゲームを投げ出してしまおうかとも考えたが、こんな単純な操作系のゲームを投げ出すのはゲーマーとしてとても恥ずかしいことなのではなかろうかと思うと、プレイの手を止めることはできなかった。
ようやく最終ステージにたどり着いた。そこで俺はあることに気づく。ごくごくコントローラーが結んでいるのは蛇口と俺の口であり、これは一切ゲーム機に接続されてないではないか。俺は試しにホースを口から離してみた。モニタをじっと見つめていると、キャラクターは何事もなかったかのように右へ向かって駆け出していく。見つめる俺。走るキャラクター。見つめる俺。走るキャラクター。そしてゴール。ゲームクリア。エンディングを見つめる俺。床を大蛇のように跳ね続けるゴームホース。ああ、これ、ごくごくコントローラーとかじゃなくて、ただのゴムホースだ。